伝説5 神仏・聖者の事業

火事 を知らせた十王堂の仏像(大柿町)
 深江 の十王堂は島内でも有数の景勝地だったそうです。その昔、十王堂には一〇体の木彫 りの仏像が安置されていたそうですが、中世の中ごろに火災に遭い、今残されているのは二体 だけになりました。そのことは文政二年(一八一九)の『国郡志下調帳』に されており、十王とは冥府めいふで亡者を裁く一〇人の王のことだといわれて ます。
 大正十年(一九二一)頃のことです。深江 にまた大きな火災があって、現在の浜集落の中心地あたりが五〇軒ほど全焼 しました。当時この島にはまだ電気がついていなくて、すべての家でランプをともしていました。そのランプの火が原因だったといわれています。どの家も寝静まった真夜中 のこと、「火事じゃ、火事じゃ!」と叫んで、皆に知らせて回った者がいました。そのお で早く気がつき、家財道具はほとんど持ち出すことができて、誰一人怪我けが人も無く、被害を最小限に食い止めることができた だそうです。
 その火事 が治まってからのち、「火事じゃ、火事じゃ!」と叫んで回った人が誰も出て来ません。それで、「あれはきっと十王堂の仏像 の化身だった小坊主にちがいない」といううわさが広まりました。深江 では今でも十王堂は火の守り仏として信仰されており、お に向かって手を合わせ、感謝の念仏を唱える人がおられます。そして深江区民会が毎年二月十一日にお寺さんにお りをしていただき、お経を上げて らっています。
(話者 二反田千鶴子)
十王 の仏像(大柿町深江)