深江の十王堂は島内でも有数の景勝地だったそうです。その昔、十王堂には一〇体の木彫りの仏像が安置されていたそうですが、中世の中ごろに火災に遭い、今残されているのは二体だけになりました。そのことは文政二年(一八一九)の『国郡志下調帳』に記されており、十王とは冥府で亡者を裁く一〇人の王のことだといわれています。
大正十年(一九二一)頃のことです。深江にまた大きな火災があって、現在の浜集落の中心地あたりが五〇軒ほど全焼しました。当時この島にはまだ電気がついていなくて、すべての家でランプを灯していました。そのランプの火が原因だったといわれています。どの家も寝静まった真夜中のこと、「火事じゃ、火事じゃ!」と叫んで、皆に知らせて回った者がいました。そのお陰で早く気がつき、家財道具はほとんど持ち出すことができて、誰一人怪我人も無く、被害を最小限に食い止めることができたのだそうです。
その火事が治まってからのち、「火事じゃ、火事じゃ!」と叫んで回った人が誰も出て来ません。それで、「あれはきっと十王堂の仏像の化身だった小坊主にちがいない」といううわさが広まりました。深江では今でも十王堂は火の守り仏として信仰されており、お堂に向かって手を合わせ、感謝の念仏を唱える人がおられます。そして深江区民会が毎年二月十一日にお寺さんにお参りをしていただき、お経を上げてもらっています。
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