伝説6 神仏・聖者の事業

「宮島さん」はきじが嫌い(能美町)
 むかし、女神様(市杵嶋姫命いちきしまひめのみこと)が乳飲み子を連れて、九州の宗像むなかたから瀬戸内海へ、落ち着く先を求めてやって来られたんじゃそうです。そうして方々 を尋ね回って、高田 の「明神の一本杉」の所に立ち寄られた。明神というのは西能美島の高田の 名で、津久茂つくもの瀬戸に面していて、風光明媚めいびなたいへん心地好い所だったそうです。そこに大きな一本杉があったので、「明神の一本杉」と呼ばれていました
 女神様はこの美しい景色と静かな自然がたいへんお気に召されて、ここにやしろを建てて、子どもといっしょに むことにしようと思われたんじゃそうです。ところが その時突然、草むらから雉が一羽、けたたましく鳴き叫んで飛び立った。その鳴 声に、眠っていた乳飲み子が驚いて大声で泣きだしたので、女神様は「なんと、 こは子どもをびっくりさせる所ではないか。これでは子どもの身体に悪い」と言 れて、他の地を求めてまた旅立たれたそうです。そうして落ち着かれた所が厳島いつくしまだったので、女神様はそれから「宮島さん」と ばれるようになったということです

(話者 福田順蔵)
 
これと同種の伝説が、江田島町切串の「二ツ小島」にも伝えられている。二ツ小島のたたずまいが市杵嶋姫命 のお に召し、「ここに鎮座 する宮を建てましょう」と船を着けられたが、その時、雉が鳴いて飛び立ち、また、蚊に腕を刺されたので、この島を嫌って厳島 へ移られたという である。
(角増渉編著「二ツ小島」『ふるさと江田島―江田島 の民話―』36ページ)