むかし、高田の岩風呂山に、たいそう力持ちのお坊さんが住み着いて、修行をしておったそうな。村の者らはこのお坊さんを「玄翁和尚」いうて呼びよったそうな。
この岩風呂山にゃあ「四郎九郎」いう大岩があってのう、山へ焚き物を採りぃ行ったり、木を伐り出す時などに、とっても邪魔になって村の者は往生しよった。それを聞いた和尚は、ある日、村の者らに四郎九郎の大岩のまわりに集まってもろうたんじゃそうな。そうして和尚が、
「今から、この大岩を三つに割って、遠くへ飛ばしてやる」
いうて言うたもんじゃけえ、村の者は口を揃えて、
「そりゃあちょっと待ってくれんさい。岩が里へ転がり落ちりゃあ、家が潰れたり、大怪我ぁする人が出ますけえ」
言うて止めたんじゃそうな。ところが和尚は、
「そがいなこたぁ無あ」
言うて、みんなの言うことを聞かずに、大きな鉄の槌ゅう取り出して、準備 しだしたんじゃと。村の者らはみんな高台 の方へ逃げて行ったそう な。
そうしよったら、やがて雷 が落ちたような大きな音がして、その音といっしょに大岩が割れて、北の空と南 の空へ飛んでいったげな。その時高台 におった村の者は、みんなそれを見たんじゃと。そうしたら和尚 はみんなに向かって、
「北 へ飛んでいった大岩は北陸・新潟の高田へ、南へ飛んでいった大岩は伊予・今治の高田へ。これで日本に三か所『高田』が出 来た」
いうて言 うたんじゃと。
大岩を割るのに使 うた鉄の槌は、この玄翁和尚の名を取って、「げんのう」と呼ぶようになったいうことじゃ。
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