伝説8 神仏・聖者の事業

の久保」の山の神(沖美町)
 高祖こうそ宝原川ほうはらがわの上流、水源付近の谷間を「もんの久保」と呼んでいますが、一名「神の久保 」とも呼ばれています。 は大木が生い茂って、昼なお暗い淋しい森でした。そこにはきれいな水が いていて、旅役者たちが拝みに来たといわれています。いつ、 が置いたものかわかりませんが、泉のほとりに三つの水瓶がありました。土地 の人はこれを「神のツボ」と呼んで、大変尊んでいました。
 ある 、一人の漁師がここを通りかかりました。そして、きれいな水に驚き、船に って帰ろうと、この瓶に水を入れて抱え上げようとしました。ところが、どうしたことか急に が痛くなってきたのです。
――これは、きっと神様のたたりに違いない。
 と、額を地にすり付けて、お許しをいました。すると、不思議に痛みが無くなったということです
 またある 、一人の農夫 が夜の明け切らぬうちに柴刈しばかりに出かけ、この久保にさしかかりました。すると、なんとそこには、手にさかきの杖を持った白髪の老人が立っているではありませんか そして、
「わしは、この山の守り じゃ。こんな夜明けに、ここに来るではないぞ」
 と言うて聞かせました。農夫 は、
―― の気配が残っているうちは、人間が入って来ると嫌がられるんだな。
 と して、それきり早朝の山行きは止めにしました。それからというものは、この農夫には何事もなく、天寿 を全うしたそうです。
 これは、土地の豪農 が盗賊から財宝を守るために水瓶に入れ、淋しい森の奥を選ん埋めて、山に入ることを禁制 にしたんじゃ、とも言い伝えられています。

(『沖美町の文化財をたずねて』)