小用の北北東の方角に水晶山という山があります。麓に水晶が出るので水晶山と呼ばれています。高さは一二五メートルで、十五分も歩けば山頂まで登れますが、そこからは呉湾と吉浦湾が一望できます。その頂上の少し先の方は岩ばかりで、岩場の真ん中辺に、富士山のように五〇センチほど盛り上がった所があって、足を掛けるのにちょうど良い格好になっています。岩の上部は平らで、そこに人の足跡のような窪みがあります。誰が言い始めたのか、それは弁慶の足跡だと伝えられています。
およそ八百年の昔、平家と源氏の戦いがあって、一ノ谷・屋島の合戦に敗れた平家の軍勢が壇ノ浦へ落ち延びる途中、平家の武士の中に、この江田島に隠れ住んだ人たちがあり、山田に隠れ住んだのが宇根某で、その子孫が小用へ出てきた吉兵衛だと言われています。平家の落ち武者を追討する源氏の武士は、この江田島や能美島にも立ち寄ったのかもしれません。大柿町にも「引島伝説」があり、大君の沖の「引島」は、飛渡瀬にあった島を弁慶が掴んで移したもので、島の峰が五つに分かれているのは、弁慶が掴んだ時の指の跡だと言われています。
また、沖美町の岸根にも、天狗さんが投げたという大きな石がありますが、それは天狗ではなくて、弁慶が投げたのだと言う人もいます。 |