尾登の現在の水源地の近くじゃが、「カフジ」いう所に、きれいな水が流れている川があった。そこへ鹿の番いがいつも水を飲みに来ておったそうな。
昔ゃあ、この能美の島にも鹿がヨウケェ(たくさん)おった、いうんよ。
ある朝、鹿が番いで水を飲みに来た。それから昼も来た。
ところが夕方にゃあ一匹しか来んかった。近くの人が、
――こりゃあ、おかしい。どうしたんじゃろうか。
思うて、山へ探しに行ってみたら、
鹿が罠にかかって死んでおったいうんじゃ。
――こりゃあ、儲けたわい。
思うて、鹿を家へ持って帰って、肉は食うて、皮はオンコロ(袖無しの半纏)にして着て、骨は丁寧に土の中に埋めて、その上に石を置いてやったんと。
それからというものは、その鹿の皮でこしらえたヌクイ(暖かい)オンコロを着て歩きよるとの、生き残ったもう一匹の鹿が、後をついて来るんじゃげな。追うても追うてもついて来るんじゃげな。そりょう見た人たちが哀れに思うてのう、ほいで、その辺りを「鹿の皮」言うようになったんよ。
鹿が水を飲みに来よった川も「シカノカワ」言うようになったんじゃが、「シカノカワ」じゃあ言いにくいんで、「カノカワ」(鹿川)言うようになったんじゃ と。 |