伝説17 水・滝・泉の由来

「千の滝・千のたらい(江田島町)
 小用こよう浦から高須の浜へ行く途中に「三つ石」という所があります。現在の深田サルベージのあたりですが、海岸 に大きな石が三つあったので、そう呼ばれていました。その の方に、昔は「千の滝・千の盥」と呼ばれる、水のよく流れる滝と、大きな盥のような滝壺 があったそうです。
「千の滝」と「千の盥」は にも知られず何十年も何百年も流れ続けて、水の勢いは滝壺の上の岩を削り、岩には ができていました。滝の高さは一〇メートルもあり、まわりには大きな木が繁っていて人が通る道は無く、いたちきつねの通る獣道けものみちがあるだけでした。その滝と滝壺 を見つけたのは、小用浦に住む怠け者の男だったそうです
 男は毎日海へ漁に出たり を歩き回ったりして、木の実や魚・貝などを採って暮らしていました。ある日、三つ石の海岸 から森へ向かって入ると、水の流れる音が聞こえます。さらに奥へ進んで行ってみると、 し開けた所があって、その奥に滝
と滝壺がありました。 の音はここから聞こえていたのです。
――よし、この水を使って米を作って、小用の者をたまがしちゃろう。
 と思って、男は毎日毎日滝壺の所へ行って田圃たんぼを作りました。春になってもみき、稲が実る秋を待ちました。 は十分にあります。森に囲まれた田圃は日照りにも台風にも強くて、 になると、どこの田よりも良い稲が実りました。
 怠け と呼ばれていた男が、りっぱに実った稲を舟に積んで小用浦へ帰って来たのを見て、人々 はびっくりしました。そして、そのわけを聞いて、またまた大魂げでした。「みんなでその滝を見に行こう」ということになって、 が先頭に立って案内をしました。海岸 を歩き、森を通り抜けて行ってみると、ほんとうに滝壺があったではありませんか。 いよく流れる滝と、盥千個分もある滝壺を見て、みんなは、「ほう、たいしたもんじゃのう
 と感心 するばかりでした。
それ以来、その と滝壺を「千の滝・千の盥」と呼ぶようになったということで す
(伝承者 竹本輝雄)