小用浦から高須の浜へ行く途中に「三つ石」という所があります。現在の深田サルベージのあたりですが、海岸に大きな石が三つあったので、そう呼ばれていました。その奥の方に、昔は「千の滝・千の盥」と呼ばれる、水のよく流れる滝と、大きな盥のような滝壺があったそうです。
「千の滝」と「千の盥」は誰にも知られず何十年も何百年も流れ続けて、水の勢いは滝壺の上の岩を削り、岩には溝ができていました。滝の高さは一〇メートルもあり、まわりには大きな木が繁っていて人が通る道は無く、鼬や狐の通る獣道があるだけでした。その滝と滝壺を見つけたのは、小用浦に住む怠け者の男だったそうです。
男は毎日海へ漁に出たり山を歩き回ったりして、木の実や魚・貝などを採って暮らしていました。ある日、三つ石の海岸から森へ向かって入ると、水の流れる音が聞こえます。さらに奥へ進んで行ってみると、少し開けた所があって、その奥に滝
と滝壺がありました。水の音はここから聞こえていたのです。
――よし、この水を使って米を作って、小用の者を魂がしちゃろう。
と思って、男は毎日毎日滝壺の所へ行って田圃を作りました。春になって籾を蒔き、稲が実る秋を待ちました。水は十分にあります。森に囲まれた田圃は日照りにも台風にも強くて、秋になると、どこの田よりも良い稲が実りました。
怠け者と呼ばれていた男が、りっぱに実った稲を舟に積んで小用浦へ帰って来たのを見て、人々はびっくりしました。そして、そのわけを聞いて、またまた大魂げでした。「みんなでその滝を見に行こう」ということになって、男が先頭に立って案内をしました。海岸を歩き、森を通り抜けて行ってみると、ほんとうに滝壺があったではありませんか。勢いよく流れる滝と、盥千個分もある滝壺を見て、みんなは、「ほう、たいしたもんじゃのう!」
と感心するばかりでした。
それ以来、その滝と滝壺を「千の滝・千の盥」と呼ぶようになったということで す。 |