伝説18 水・滝・泉の由来

湯田 の湯が止まった話(能美町)
 旧高田村の湯田という所は、津久茂つくもの瀬戸に面した海岸沿いの景色の良い所で、隣村との往来の要路 でもあります。そこの海岸から約二〇メートル奥へ入った所に、少し高くなった岩場があって、冷たいきれいな清水がこん々と湧き出ている泉があります
 高田の福田順蔵 さん〈明治四十年(一九〇七)生まれ〉がまだ子どものころ、お父さん〈福田伊吉氏・明治十年(一八七七)生まれ〉から、 のような話を聞かされたことがあるそうです
「昔ゃあ、この湯田の水は冷やぁ水じゃあうて、湯が湧いておったんじゃそうな。村のもんはみんなこの湯を大事にしとってのう、家へ汲んで帰ったら決して無駄にゃあせん、お茶をいれたり、煮炊きに使うたりしておったんじゃと
 ところが、ある日、よそから来た通りがかりの子ども連れの女子おなごが、モツキ(おむつ)や汚れ物をこの湯で洗うたんじゃそうな。そうしたら、たまげたことに、今まで いとった湯がピッタシ止まって、冷やぁ水が湧き出して来たんじゃと。女子はビックリして、村の者に られる思うて、子を連れて逃げて行ったんじゃと」
 この話を聞いて、順蔵 さんがお父さんに、
「とっ まえて、シゴぅして(懲らしめて)やりゃあエかったに」
 と言いましたら、お父さんが大きな で、
「馬鹿ぁ言うもんじゃああ。この話はのう、女子のしたことを責める話じゃあ無あ。村の偉ぁ人が、『みんなが使うもんや、みんなが出入りする建物やなんぞは大事に使えよ。そうせにゃあ、みんなが大損 することになるんドゥ』いうことを、村の者に教えてくれた話よ」と叱られたそうです。その時のお父さんの、こわいくらい厳かだった顔が目に焼き付いていて、「九十歳を過ぎた今でもよう れません」と順蔵さんは話してくれました
(話者 福田順蔵。伝承者 大儀正夫)