平大臣いうなぁ平家の落人伝説じゃろう思います。
昔、大君の王泊へ平家の一族が立ち寄った。その時に、一部の人が飛渡瀬を通って現在の中町の高下へ行く途中、飛渡瀬のミヤカに船を繋いで休んだが、病が重かったので、この地で亡くなっちゃったいうんです。道のすぐ縁に祠が建ってあって、そのすぐ前に水が湧いて出ていましたが、今はもう誰もかまわんけえ、水も出んようになりました。四十年ほど前まではこの道も狭い道で、すぐ横の崖になっちょる所に元の祠があって、大きな岩もあって、表面に梵字のようなものを彫った跡があったようですが、道路を拡げる折に邪魔になるいうて、削り取ってどこかへ捨ててしもうたんですよ。「祠はもったいない」いうんで、大田耕由さんとわしらが今の場所に移しました。
昔は、ここの湧き水は眼病や胃病・皮膚病などによく効くいうて評判になって、遠くは呉の方からも眼を洗いに来んさったです。大雨が降ると水も時にゃあ濁って汚くなることもあるけえ、「なんでも井戸を掘り替えようや」いうことで、大田さんと幸地さんとわしと三人で今の井戸を掘って、奥の水源地からパイプを引いて水を溜めるようにしたわけですが、今は寂れてしまって誰もかまわんけえ、水も落ちて来んようになりました。
あの大きな岩には何かいわれがあったらしいが、捨ててしもうて、惜しいことをしたよのう。あの岩と対面するように、江田島の鷲部にも大きな岩がありますよ。県道沿いの、字か絵の模様を彫った大きな岩で、その下に墓石のような石があります。この両方の岩の間を火の玉が海を渡って行ったり来たりするのを、昔は多くの人が見かけたいう話が伝えられています。これを「天狗の火渡り」言うとりました。今でもそういう火の玉を見たいう人もいるよのう。誰でもかれでもこの火が見えるいうもんじゃあ無あ。神さんや仏さんを信心している、霊感のある人にゃあ見えるんじゃげな、といういわれがあるんですよ。 |