伝説 29 祠堂しどうの由来

貴船神 の由来(沖美町)
 高祖こうその海岸に、海上業者の守り神としてあがめられる貴船神社があります。約四百年前の創建 と伝えられていますが、現在の県道ができるまでは海べりにあって、三吉みよしからは海岸伝いに砂浜を踏んで参詣さんけいしていました。社殿の裏から小川が海に注いでいて、その水は出漁者にとっては神水 として信じられていましたが、その小川は今はありません。明治年間 には九月五日の祭礼日に、網元が「押廻し」といって大きな船を神社の沖でぐるぐる押し回し、神様の乗船を祈願 したと伝えられています
 この神社は、昔は龍宮 または龍神社と呼ばれていましたが、今日でも地元の人々から「ジュンゴの宮」という名で しまれています 『能美島志』には「龍宮、高祖むらノ海岸ニ有リ、揚梅木有リ、土人之ヲ燈籠ト謂フ」と記載されており、また、『藝藩げいはん通志つうし』には、「龍神社」と記されています。
 御神体は石ですが、これについては、「昔、津久茂つくもの漁師が高祖の沖合で網漁をしていた時、同じ石が何度も上がってきたので不思議に思い、御神体 としてここにおまつりをしたところ、その後は豊漁 が続いた」という言い伝えがあります。「また、ある人がこの御神体 を持ち帰ろうとして船まで運んだが、船が全く動かなくなってしまったので元へ返した」という話も伝えられています
 現在の社殿 は、昭和十一年(一九三六)ごろ広島市の三滝から移築されたものですが、貴船神社 と名称が変わったいきさつについては、それを知る手掛かりがつかめません

(『沖美町の文化財をたずねて』)
貴船神社