高祖の海岸に、海上業者の守り神としてあがめられる貴船神社があります。約四百年前の創建と伝えられていますが、現在の県道ができるまでは海べりにあって、三吉からは海岸伝いに砂浜を踏んで参詣していました。社殿の裏から小川が海に注いでいて、その水は出漁者にとっては神水として信じられていましたが、その小川は今はありません。明治年間には九月五日の祭礼日に、網元が「押廻し」といって大きな船を神社の沖でぐるぐる押し回し、神様の乗船を祈願したと伝えられています。
この神社は、昔は龍宮または龍神社と呼ばれていましたが、今日でも地元の人々から「ジュンゴの宮」という名で親しまれています。『能美島志』には「龍宮、高祖邑ノ海岸ニ有リ、揚梅木有リ、土人之ヲ燈籠ト謂フ」と記載されており、また、『藝藩通志』には、「龍神社」と記されています。
御神体は石ですが、これについては、「昔、津久茂の漁師が高祖の沖合で網漁をしていた時、同じ石が何度も上がってきたので不思議に思い、御神体としてここにお祀りをしたところ、その後は豊漁が続いた」という言い伝えがあります。「また、ある人がこの御神体を持ち帰ろうとして船まで運んだが、船が全く動かなくなってしまったので元へ返した」という話も伝えられています。
現在の社殿は、昭和十一年(一九三六)ごろ広島市の三滝から移築されたものですが、貴船神社と名称が変わったいきさつについては、それを知る手掛かりがつかめません。
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