世間話26 自然の奇異・不思議

トン トン山(能美町)
 むかしは小学校 一年生になると、子ども組に入っていました。近所の子どもたち五、六人または七、八人 が集まって、いっしょに遊んだり、草刈りなど子どもにも出来る仕事を協力し合ってしたりする、仲良 しグループです。そして、それぞれのグループには、みんなを統率 する上級生がいました。いわゆる「ガキ大将」です。力が強くて、何でも知っているし、仕事 も上手にやってのけます。危ない時には、仲間を守ってくれます。その代わり、言うことを聞かずにワルサ(悪戯いたずら)をした時には、怒鳴られたり、ゲンコツを落とされたりした、コワイあんヤンでした。
 大正 九年(一九二〇)四月、天気の良い日曜日でした。朝早く兄ヤンが家へ来
「オイ、コッパぁナデぇ(枯れた の葉や小枝を拾い集めに)行こうや」
と誘ってくれました。ワシ(私)はすぐに とコッパサデ(竹製の熊手)を手に、かごを背負って飛び出しました。子ども組はもうみんな揃っていました。ワイワイ言いながら山を登って行きましたが、その途中 で、兄ヤンが、
「きょうは、トントン山へ行って ばんかいや」
 と言ったのです。ワシらマイ(小さい)者にとっては、初めて聞く山でした。
 コッパをナデて、荷造 りが出来ると、
「さあ、これからトントン 山へ行くぞ」
 と、兄ヤンを先頭 にして出発しました。
 しばらく行くと、 も木も生えていない、三、四坪ぐらいの盛り上がった平地がありました。 ヤンがその上へ上がって、真ん中辺りを棒でたたくと、「トントン」と、太鼓 のような音がするのです。
「ここがトントン じゃ。トントンと音がするけえ、トントン山いうんよ」
 なるほど、と思いましたが、どうして太鼓 のような音がするのか不思議でした。みんなで代わる わるたたいて遊びました。トントンという調子に合わせて歌を歌う もいました。そのうち、兄ヤンが、
「オイ、たたくのを止めて、わしの話を けえや」
ったのです。
「なんでコガイナ(このような)音がするかいうとのう、ここは鬼がんどる家の屋根の上なんじゃ。 は、みんなが何をしよるんか、わかっとるんでぇ。ホイデ(それで)、みんなが棒でたたくのに調子を合わせて、赤鬼 やら青鬼やらが下で太鼓をたたきよるんよ。ホイジャケエ(それだから)、トントンいう太鼓 の音がするんよ。ソリャア(それは)のう、『たたく のを止めんと、出て行って捕って食うちゃるド』いう合図なんじゃ。一番ジョウニ(たくさん)たたいたもんから先に食うんじゃ
 それを聞いたワシらマイ者は、いやたまげたのなんの、一目散に走ってにましたよ( りました)。
 その時のあんヤンは、もう九十二歳(平成十年(一九九八)当時)になりました。先日、 しぶりに訪ねましたら、
元気 ゅう出して、もう一度トントン山へ行きたいのう。まだ音が出るかのう?」
していました。
(話者 大儀正夫)