世間話29 人間の運命・因縁

おけ屋の竹割り(能美町)
 桶屋はのう、ヨウ(よく) の真ん中で、長あ竹を道に並べて割りよろうがい。ああやるんが一番やりやすいのよ。ほいじゃけえ、道を通るもんにゃあ邪魔ようのう。ほいでなによう、前にゃあ(昔は)役人からヨウ小言 を言われよったし、どうかすりゃあ、せっかく並べた竹をけにゃあならんこともあったんじ げな。
 それがなによう、いつ、どこでじゃったか知らんが、偉あ人がなによう、賊かわるもんかに追われてのう、ちょうど 酒蔵の前まで逃げて来んさったんじゃげな。ほうしたらなによう、蔵ん中から桶屋が出て来てのう、その人を酒蔵の大桶ほその中へ隠しちゃげたん ゃげな。
 それで、その偉あ人が喜んで、その褒美ほうびにノ、これからは道の真ん中で竹を並べて仕事をしてもエエ (よい)言うてくれたんじゃげな。ほいじゃけえ、今の巡査でもノ、桶屋 が道の真ん中で竹を割りよってもノ、あんまり小言を強う言わんようになった よ。
 同じ竹を使う仕事でも、藤屋 はいけんのよ。
桶屋ならエエ んよ。
(話者 新宅文夫)

新宅文夫氏が10歳ぐらいのころ、明治10年(1877)生まれの祖父から聞いた話。
能美町では、桶屋を「いーだ屋」あるいは「輪替わがえ屋」と んでいたが、ここでは桶屋としておいた。