これもいつごろの話かわからんが、鹿川村の漁港の近くに、やせて貧相なナリ(身なり)をした母親が子どもを三人連れてやって来て、「何か恵んでください」と家々を回っておったんじゃそうな。どの家でも、この親子に米一合とか銭一銭とかやっておった。子どもにゃあ菓子をやる家もあったし、御飯を食べさせる家もあった。それからは、この親子は毎日毎日やって来るようになった。 ある日、一人のババ(婆)さんがいつものように子どもに飴玉をやっておったら、母親が、「わしらぁ、こうして毎日親切にしてもらって、とてもうれしい。それでお礼にノ、あんたに一つだけエエ(良い)ことを授けてあげましょう。それでみんなの病気を治してくれんさい」 と言うた。そうして、ババさんが授けてもらったのはヤイトウ(お灸)じゃった。ババさんにヤイトウを授けると、母親は子どもを連れてそのままどこかへ行ってしもうた。
授けてもろうたヤイトウは、万病によく効くいうものじゃった。特にクサ(難病の総称で、子どもがよくかかる病気)によく効いた。それで、村の人々は病気にかかるとみんなババさんのところへ行って、ヤイトウで治してもらった。クサにかかった子どもも、このヤイトウで治った者が多かった。お陰で、この辺りの人々はその後、健康な身体で暮せるようになったんじゃと。
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