世間話32 人間の運命・因縁

ヤイトウ(おきゅう)を授けてくれた旅の女
                            (能美町)
 これもいつごろの かわからんが、鹿川村の漁港の近くに、やせて貧相なナリ(身なり)をした母親 が子どもを三人連れてやって来て、「何か恵んでください」と家々を回っておったんじゃそうな。どの家でも、この親子に米一合とかぜに一銭とかやっておった。子どもにゃあ菓子 をやる家もあったし、御飯を食べさせる家もあった。それからは、この親子は毎日 毎日やって来るようになった。
 ある日、一人のババ(婆)さんがいつものように子どもに飴玉あめだまをやっておったら、母親が、「わしらぁ、こうして毎日 親切にしてもらって、とてもうれしい。それでお礼にノ、あんたに一つだけエエ(良い)ことをさずけてあげましょう。それでみんなの病気 を治してくれんさい」
 と言うた。そうして、ババさんが けてもらったのはヤイトウ(お灸)じゃった。ババさんにヤイトウを授けると、母親 は子どもを連れてそのままどこかへ行ってしも た。
 授けてもろうたヤイトウは、万病 によく効くいうものじゃった。特にクサ(難病の総称で、子どもがよくかかる病気 )によく効いた。それで、村の人々は病気にかかるとみんなババ さんのところへ行って、ヤイトウで治してもらった。クサにかかった子どもも、このヤイトウ で治った者が多かった。お陰で、この辺りの人々はその後、健康な身体 で暮せるようになったんじゃと。 
(話者 長江 平)