角増渉編著 『ふるさと江田島―江田島の民話―』(昭和五十二年(一九七七)刊。さつき出版)に、勘兵衛という名の豪胆で異常な力持ちの話が十一話収められている。その中から第一話・第二話・第三話・第八話を転載しておく。
◇
勘兵衛とは大須の元祖といわれる人で大須の土にはじめて鍬をうちこんだ一家のおやじさんである。
彼は天和二年(一六八二)鷲部に生まれ、明和八年(一七七一)五月二十日九十一歳で歿した。享保十七年(一七三二)江戸時代中期八代将軍吉宗の時代、今(注 本書の出版当時)から約二百三十年のむかし前人未踏の原生林に開拓の斧をふるい始めた勘兵衛一家の瞳はかがやいていた。住居は「マエノウエ」のふもと勘兵衛屋敷につくられた。 苦闘十数年延享二年(一七四五)には、みごとに成長した楮畑の地主としての権利を確保すべく代官所へ開拓届(覚書 浜本家現存)を出すまでにこぎつけた。その時の勘兵衛の頭に現在の大須のようすが想像できたろうか。
しかしこの時はじめて公に使われた大須差須浜の名は今もかわらずつづいている。勘兵衛は大須に来た時は五十歳であったが若い時より身丈五尺八寸五分(一七七センチ)体重二一貫五百(八一キロ)八人力と伝えられ数々の逸話の持ち主であった。古老より伝え聞いた翁の話を紹介してみたいと思います。
|