むかし、あるところに、オトッタン(お父さん)とオカン(お母さん)とトクボという男の子がおったそうな。
オトッタンはトクボが可愛ゆうて可愛ゆうて、毎日仕事から戻るとトクボを自分のそばに置いて、そりゃあ可愛いがったもんじゃと。オカンはトクボの継母じゃったげなが、オトッタンがトクボをあんまり可愛いがるもんで、だんだんトクボが憎らしゅうなって、しまいにゃあオトッタンが仕事に出たあとで、子どもにゃあ無理なエラァ(つらい)仕事をさせて、「ヨウヤラン(上手にできない)」言うては怒鳴りつけ、「怠けとる」言うては棒切れでたたきよった。それで、トクボの顔や手足に生傷が絶える時が無かったんじゃそうな。
それでもトクボは、オトッタンがその傷を見て、「ドシタンド(どうしたのか)」と尋ねても、「転んだ」とか「木にブチ当った」とか言って、オカンにたたかれたことなど一言も言わんかったそうな。
ある日、オトッタンが仕事から戻って見ると、トクボがおらん。脚絆を脱ぎながら、
「トクボは」
と聞くと、オカンは、
「ありゃあ山へ行ったまんま、まだ戻って来んで」
と答えたそうな。オトッタンは魂げて、
「日も暮れとるのに戻らんのは、こりゃあ山で何かあったんド」
と言って、右足の脚絆を脱いで、まだ左足の脚絆は取っとらんかったが、そのまんま急いで山へ行ったそうな。そうして、あっちの山、こっちの山と、森の中や谷底を、
「トクボ」「トクボ」
と大声で呼びながら探し回ったんじゃそうな。ホイデモ(それでも)、トクボは見つからんかった。見つからんはずよう。トクボはかわいそうにオカンに殺されて、床の下のイモガマ(藷を貯蔵する穴)に隠されておったんじゃそうな。
そんなことは知らんオトッタンは、何日も家へ帰らずにトクボを探し続けているうちに、くたびれて、くたびれて、もう一足も動けんようになって、とうとう山の中で死んでしもうたんじゃそうな。
それでも、死んだオトッタンは鳥に生まれ変わって、「トクボ」「トクボ」と鳴きながら、今でもトクボを探し続けているんじゃと。ホイジャケエ(それだから)、トクボ鳥は右足は白くて、左足は脚絆をつけたまんまだったので、黒いんじゃそうな。
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