昔むかし。あるところに、一匹の蛇がおりました。それが蛙を食べかけての、それを旅のおじさんが見つけての、 「その蛙を放して助けてやってくれ。うちの娘をわたすけん」
言うた。おじさんでみりゃあ、ただなんとなしに言うたそうですがの、まあそうしたらすぐ、蛇が蛙を放したいうての。そのまま帰ったんじゃがの、胸へこたえとんですけんの。 夜になったらの、一人の若い衆が来られてのう、 「今日の約束どおりに娘さんをもらいましょう」 言うて来られて、 「まあ、そう言うてくれな。まだ娘にも話しとらんのにのう、そういう極端なことを言うてもろうたら・・・まあ、あすの晩まで待ってくれ」 約束をして蛙を助けたんじゃけんの、こりゃあまあ仕方がない、とあきらめたんじゃそうですな、お父さんが。 そしてまあ、あくる日、娘に話したら、娘も泣いてのう、たまげてから、 「どうか方法がないもんじゃろうか」
いうて親子が考えての、裏の蔵へ入って、肌理張りをしての、囲おういうことになったんですよ。 それよりシテエ(一日)前にの、ある家で、子どもを遊ばせるのに、ガニ(蟹)を籠いっぱい飼うておったんですげな。それを見た娘さんが、 「このガニを逃がしてやってくれ。この金をやるけん」 言うての、子どもはお金の方が大事なけんの、海へ逃がしてやったんじゃそうです。 そうようなことがあって、娘さんは裏の蔵へ入って、肌理張りをして、もういかなる人でも入って来ることはなるまあいうことになっての。 そしたら、あくる日の夜、また若い衆が来ましたげなの。 「約束どおり娘をもらいましょう」 言うて。 「まあ、そいじゃあどうもしようがないけえ、裏の蔵へ入れちょるけえ、あなたが勝手にしてくれ」 その時はまだ人間の姿でおったんですげにの。 あくる朝、娘は死んじょろうで思うての、お父さんが泣きの涙で出てみたら、まあその蔵を蛇が七巻き巻いちょったそうですの。その時に、ガニが助けたそうですのう。たくさんのガニが、蔵をずうと巻いちょる蛇を、一分刻みにいちいちみな切って回っての、そして蛇を殺しちょったいうての。
そいじゃけんの、恩のあるものは、人間じゃあない畜生でも、恩返しにガニが助けてくれた。そういうような話なんですげな。
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