昔話2

かにの恩返し(江田島町)
 昔むかし。あるところに、一匹の蛇がおりました。それがかえるを食べかけての、それを旅のおじさんが つけての、
「その を放して助けてやってくれ。うちの娘をわたすけん」
 言うた。おじさ でみりゃあ、ただなんとなしに言うたそうですがの、まあそうしたらすぐ、 が蛙を放したいうての。そのまま帰ったんじゃがの、胸へこたえとんですけ の。
 夜になったらの、一人の若いが来られてのう、
「今日の約束どおりに さんをもらいましょう」
 言うて来 れて、
「まあ、そう言うてくれな。まだ娘にも話しとらんのにのう、そういう極端 なことを言うてもろうたら・・・まあ、あすの まで待ってくれ」
 約束 をして蛙を助けたんじゃけんの、こりゃあまあ仕方がない、とあきらめたんじゃそうですな、お さんが。
 そしてまあ、あくる 、娘に話したら、娘も泣いてのう、たまげてから、
「どうか方法 がないもんじゃろうか」
 いうて親子が考えての、 の蔵へ入って、肌理張きめばりをしての、囲おういうことになったんで よ。
 それよりシテエ(一日)前にの、ある で、子どもを遊ばせるのに、ガニ(蟹)を籠いっぱい飼うておったんですげな。それを見た さんが、
「このガニ を逃がしてやってくれ。この金をやるけん」
 言うての、子どもはお金の方が大事なけんの、 へ逃がしてやったんじゃそうで
 そうようなことがあって、 さんは裏の蔵へ入って、肌理張りをして、もういかなる人でも入って ることはなるまあいうことになっての。
 そしたら、あくる日の夜、また若い が来ましたげなの。
「約束どおり をもらいましょう」
 言 て。
「まあ、そいじゃあどうもしようがないけえ、 の蔵へ入れちょるけえ、あなたが勝手 にしてくれ」
 その時はまだ人間 の姿でおったんですげにの。
 あくる朝、娘 死んじょろうで思うての、お父さんが泣きの涙で出てみたら、まあその蔵を蛇が七巻 き巻いちょったそうですの。その時に、ガニが助 たそうですのう。たくさんのガニが、蔵をずうと巻いちょる蛇を、一分刻 みにいちいちみな切って回っての、そして蛇を殺 ちょったいうての。
 そいじゃけんの、 のあるものは、人間じゃあない畜生でも、恩返しにガニが助けてくれた。そういう うな話なんですげな。
(角増渉編著『ふるさと江田島』 話者 山田いつよ・明治二十五年生まれ)

「蟹報恩」(大成 104B)
 原題は「蛇聟」になっているが、「蟹の恩返し」に めておいた。