昔は「小古江の新道」といって、小古江から鹿川村へ行くたった一本の道がありました。それは淋しい淋しい道で、暗くなると化け物が出ると言われていたんです。その道のほとりに、独り者の中年の男が住んでいたそうです。 ある晩、寝ていると戸をたたく音が聞こえます。目を覚まして出て見ると、戸口に美しい女が立っていて、 「夜道に迷って家へ帰れなくなり、困っております。どうか一晩泊めてください」 と言うのです。男は困惑しながら、 「まあ粗末な家ですが、中へ入ってください」 と、美しい女を家へ入れて、泊めてやることにしました。 そうしたら、あくる朝、その女は、 「もしよろしければ、私をあなたの嫁にしてください」 と言うのです。男は独り者でしたので、喜んで結婚することにしました。
結婚してから数日たったある日のこと、男は畑仕事に出ていて忘れ物を思い出し、家へ帰りました。お嫁さんは家の中で掃除をしていました。その後姿を見て、男はビックリしました。なんと、座敷を掃いているのは箒ではなくて、長い大きな尻尾ではありませんか。声も出せずに、そーっとその場を離れて、男は畑へ引き返しました。 そして、野良仕事を済ませてから家へ帰ってみると、お嫁さんの姿が見えません。それっきりお嫁さんは、二度と姿を現すことはなかったそうです。 村の人たちは、 「あれは狐だったにちがいない」
とうわさをしたという話です。
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