昔、あるところに、地蔵さんがあったそうです。そこへの、妊娠した女の人がの、 「どうぞ安産が出来ますように。人が知らんように、エエガイに(うまい具合に)こっそり生まれますように」 いうて願いに行きよったそうです。それがの、自分のあたりまえの主人じゃなかったそうな、かげ人じゃったそうな。それで、あがぁなことをしよった。 ところが、それを男が知っての、念願に参りよるような風じゃが、なにがあれがあたりまえに産むこたぁいりゃあせん、いっそのこと、ありゃあ死んだ方がエエ(よい)よ、思うての、地蔵さんへ参っちょるのを幸いに、そこで男が女を殺したんじゃそうです。ところが、悪いことをしたと一応は自分も思うての、地蔵さんに見られたわい思うての、そこで地蔵さんに頼うだんじゃそうです。 「地蔵さん、ここでわしゃ悪いことをして殺したんじゃが、どうでもあんたは、わしがここで殺したいうことを言うてくれんさんなよ」
そうしたら、地蔵さんが言うのには、 「あんたがそう言うても、まあ見よってみい。わしゃあ言わんが、ワレ(お前)言うな」 こりゃあイナゲな(変な)ことを言うが……思うたが、はあそれまでよ思うて、エエガイに(よい具合に)葬って埋ずめたそうです。 そうして、エエガイに誰も知りゃあせん思うて、その地蔵さんの前をいつか通ることがあったそうな。ところがの、そこで思い出しての、 「わしゃ、あの時にここで殺したことがあるがのう。悪いことをしたがのう。あの時は、ここじゃったのう。殺したがのう」 いうて独り言を言いよったらの、 「そりゃ言わあ、そりゃ言わあ」 いうて、地蔵さんが言いましたげな。
せぇじゃけんの、悪いことはせんもんじゃ。
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