昔話4

は災いのもと(江田島町)
 昔、ある ところに、地蔵さんがあったそうです。そこへの、妊娠した女の人が
「どうぞ安産が出来 ますように。人が知らんように、エエガイに(うまい具合に)こっそり まれますように」
 いうて いに行きよったそうです。それがの、自分のあたりまえの主人じゃなかったそうな、かげ じゃったそうな。それで、あがぁなことをしよった。
 ところが、それを男が知っての、念願 に参りよるような風じゃが、なにがあれがあたりまえに むこたぁいりゃあせん、いっそのこと、ありゃあ死んだ方がエエ(よい)よ、思うての、地蔵 さんへ参っちょるのを幸いに、そこで男が女を殺したんじゃそうです。ところが、 いことをしたと一応は自分も思うての、地蔵さんに見られたわい思うての、そこで地蔵さんに うだんじゃそうです。
地蔵 さん、ここでわしゃ悪いことをして したんじゃが、どうでもあんたは、わしがここで したいうことを言うてくれんさんなよ」
 そうしたら、地蔵 さんが言うのには、
「あんたがそう うても、まあ見よってみい。わしゃあ言わんが、ワレ(お前)言う
 こりゃあイ ゲな(変な)ことを言うが……思うたが、はあそれまでよ思うて、エエガイ に(よい具合に)葬って埋ずめたそうです。
 そうして、エエガイに も知りゃあせん思うて、その地蔵さんの前をいつか通ることがあったそうな。ところがの、そ で思い出しての、
「わしゃ、あの にここで殺したことがあるがのう。悪いことをしたがのう。あの時は、ここじゃったのう。殺した のう」
 いうて独り を言いよったらの、
「そりゃ わあ、そりゃ言わあ」
 いうて、地蔵さんが いましたげな。
 せぇじゃけんの、 いことはせんもんじゃ。
(角増渉編著『ふるさと江田島』 話者 山根おさち)

「こんな晩」(大成 本格新33A)