昔話5

肝試し (能美町)
 前にゃあのう(昔は)、若ぁもんが夜になると、あっちこっちの家に集まって、ヨウ(よく)肝試しをしたもんよ。肝試しい ナァ(のは)、初めオトロシイ(恐ろしい)話を聞かされるんよ。 きよると、夜が更けてくるじゃろう。ホシタラ(そうしたら)、焼き場とか、天狗 さんが出るいうて平生人が行かんような気味の悪いとこへ行かされてのう、そこに自分が来た証拠を残して戻るんよ。オトロシイ話を聞かされた後じゃけえ、みんな トロシがりよった。
 ある晩、肝試しをしよういうんで、初めに人魂ひとだまが出たいう話を聞きよったらのう、シーヤンいう若いが、
「ソガイナ(そのような)もんがおるかいや。ありゃあ臆病者 の作り話よ。ワイラぁ(お前らは)それがオトロシ んか」
 言うた。肝試しをする にゃあ、いつも逃げよったヤツじゃけえ、みんなが腹ぁ立っ のう、
「よし、一番初めは ーヤンじゃ。ワレ(お前)行けッ!」
 いうて、口々に言うたんじゃ。シーヤンはしようがなしに、掛矢かけや(大きな木槌)とくいを持って出かけたんじゃそうな。この晩の肝試しは、高下こうげの焼き場の入り口に、掛矢で を打ち込んで戻って来るいうことじゃった。
 シーヤンは行くのは行ったんじゃろうが、ハア (もう)戻って来てもエエころんなっても戻って来ん。そのうち、みんな心配 になりだした。
「こりゃあ、おかしい。 か起きたんじゃあないか」
 いうので、みんなで行って ることにした。
 行って見りゃあ、シーヤンが倒れて、着物の前を大はだけにはだけてうなっちょった な。
ーヤン!」
 いうて んだらのう、シーヤンがひょいと顔を上げて、大声で泣き泣きわめいたげな。「助けてくれー。死人しびとがわしの着物を引っ張って、まだ放さんのんじゃ」
 ホ デ(それで)、みんながシーヤンの着物を見たらのう、着物のすそに杭を打ち込んどっ たんじゃげな
 それからとい ものは、シーヤンは大口ゅうたたかんようになったんじゃと。
(話者 小宇根藤吉)

「肝試し」(大成 410)