前にゃあのう(昔は)、若ぁ者が夜になると、あっちこっちの家に集まって、ヨウ(よく)肝試しをしたもんよ。肝試しいうナァ(のは)、初めオトロシイ(恐ろしい)話を聞かされるんよ。聞きよると、夜が更けてくるじゃろう。ホシタラ(そうしたら)、焼き場とか、天狗さんが出るいうて平生人が行かんような気味の悪い所へ行かされてのう、そこに自分が来た証拠を残して戻るんよ。オトロシイ話を聞かされた後じゃけえ、みんなオトロシがりよった。 ある晩、肝試しをしよういうんで、初めに人魂が出たいう話を聞きよったらのう、シーヤンいう若い衆が、 「ソガイナ(そのような)もんがおるかいや。ありゃあ臆病者の作り話よ。ワイラぁ(お前らは)それがオトロシイんか」 言うた。肝試しをする時にゃあ、いつも逃げよったヤツじゃけえ、みんなが腹ぁ立ってのう、 「よし、一番初めはシーヤンじゃ。ワレ(お前)行けッ!」 いうて、口々に言うたんじゃ。シーヤンはしようがなしに、掛矢(大きな木槌)と杭を持って出かけたんじゃそうな。この晩の肝試しは、高下の焼き場の入り口に、掛矢で杭を打ち込んで戻って来るいうことじゃった。 シーヤンは行くのは行ったんじゃろうが、ハア(もう)戻って来てもエエころんなっても戻って来ん。そのうち、みんな心配になりだした。 「こりゃあ、おかしい。何か起きたんじゃあないか」 いうので、みんなで行って見ることにした。 行って見りゃあ、シーヤンが倒れて、着物の前を大はだけにはだけて唸っちょったげな。 「シーヤン!」
いうて呼んだらのう、シーヤンがひょいと顔を上げて、大声で泣き泣きわめいたげな。「助けてくれー。死人がわしの着物を引っ張って、まだ放さんのんじゃ」
ホイデ(それで)、みんながシーヤンの着物を見たらのう、着物の裾に杭を打ち込んどったんじゃげな
それからというものは、シーヤンは大口ゅうたたかんようになったんじゃと。
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