昔なんじゃげなぁのう、八四郎いう者がおってのうや、まあ畑へヒンゴテ(毎日)出るげな。その女房がよく間鍋炊きゅうする(留守に御馳走を作って内緒で食べること)を知ってのう、ある日のこと、
――試してみちゃろう。 思うてのう、一応畑へ出て、途中こっそり帰って見ると、なんじゃげなのう、隣の木綿買いのばあさんと二人が、うまいものをしてしきりに食いよるげなのう。そこで八四郎さんは、隣のばあさんの木綿糸が縁にあったのを、こっそり牛ダンヤ(牛のいる納屋)ん中へ投げ込んで、また畑へ行ったげなぁ。 そうして夕方帰って来て見るとなんじゃげな、隣のばあさんが「木綿糸が無い」言うて、大騒ぎしよるんじゃげな。そいで八四郎さんは、 「よしッ、わしが鼻で探してやろう」 言うてのう、マアあっちこっち探して、牛ダンヤの中から見つけ出したげなよ。
それから、八四郎さんは「鼻神じゃ」いうて大評判になってのう、それが広島のお殿様のお耳に触れてのう、「お姫さんの病気を嗅ぎ出してくれ」いうて連れに来たげなよ。そいでまあ八四郎さんが行ってみりゃあ、まず綺麗なお座敷で御馳走を食わすんじゃげな。八四郎さんは、
――嗅ぎ出せなんだら、首切りの罪になる。 思うて、こっそり逃げよう思うて、お城の大門の前まで来たら、狐が二匹話をしよるんじゃげな。 「お前は、お姫さんの病気がナシテ(なぜ)治らんか、知っちょるか」 「いや、知らんよう」 「ありゃあのう、この城が建つ時にのう、この門の下に蟇(ひき蛙)が一匹埋まってのう、まだ今に生きとるけんじゃ(生きているからだ)」 八四郎さんはこれを聞いてのう、
――こりゃあ、エエ(良い)ことを聞いたッ! と部屋へ帰って、その晩はまあ寝たんじゃげな。 明けての朝よ、殿様に、 「この門の下の、生きた蟇を掘り出してやれば、お姫様の病気は治ります」 いうて申し上げたげな。そこで、殿様がすぐにその門を壊して見ると、マコト(本当に)青蟇がまだ生きておったげなのう。それを掘り出したら、お姫様の病気はケロッと治ったげな。
それから、この八四郎さんを出雲大社に祀ったんじゃげな。出雲のヤシロ(社)と言おうがい。ありゃあ、この八四郎さんを祀ったけん、ああ言うんじゃと。
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