昔話6

鼻きき八四郎やしろう(能美町)
 昔なんじゃげなぁのう、八四郎いうもんがおってのうや、まあ畑へヒンゴテ(毎日)出るげな。その女房がよく間鍋炊まなべだきゅうする(留守に御馳走ごちそうを作って内緒で食べること)を知ってのう、ある のこと、
―― してみちゃろう。
 思うてのう、一応 へ出て、途中こっそり帰って見ると、なんじゃげなのう、隣の木綿 買いのばあさんと二人が、うまいものをしてしきりに食いよるげなのう。そこで八四郎さんは、 のばあさんの木綿糸が縁にあったのを、こっそり牛ダンヤ(牛のいる納屋)ん中へ投げ込んで、また へ行ったげなぁ。
 そうして夕方 帰って来て見るとなんじゃげな、隣のばあさんが「木綿糸が無い」言うて、大騒 しよるんじゃげな。そいで八四郎さんは、
「よしッ、わしが で探してやろう」
 言うてのう、マアあっちこっち探して、牛ダン の中から見つけ出したげなよ。
 それから、八四郎さんは「 神じゃ」いうて大評判になってのう、それが広島のお殿様のお耳に触れてのう、「お姫さんの病気をぎ出してくれ」いうて連れに来たげなよ。そいでまあ八四郎さんが行ってみりゃあ、まず綺麗きれいなお座敷で御馳走を食わすんじゃげな。八四郎 さんは、
――嗅ぎ せなんだら、首切りの罪になる。
 思うて、こっそり逃げよう思うて、お城の大門の前まで来たら、きつねが二匹話をしよる じゃげな。
「お前は、お姫さんの病気 がナシテ(なぜ)治らんか、知っちょるか」
「いや、 らんよう」
「ありゃあのう、この城が建つ時にのう、この門の下にひき(ひき蛙)が一匹埋まってのう、まだ今に きとるけんじゃ(生きているからだ)」
 八四郎さんはこれを いてのう、
――こりゃあ、エエ(良い)ことを いたッ!
 と部屋へ って、その晩はまあ寝たんじゃげな。
 明けての よ、殿様に、
「この門の下の、 きた蟇を掘り出してやれば、お姫様の病気は治ります」
 いうて申し上げたげな。そこで、殿様 がすぐにその門を壊して見ると、マコト(本当に)青蟇あおびきがまだ生きておったげなのう。それを掘り出したら、お姫様の病気はケロッと ったげな。
 それから、この八四郎さんを出雲大社にまつったんじゃげな。出雲のヤシロ(社)と言おうがい。ありゃあ、この八四郎さんを祀ったけん、ああ うんじゃと。
(広島県師範学校編『芸備の昔話』 話者 上河内美男)

嘘八卦うそはっけ」(大成 626)