前にゃあのう(昔はねえ)、平生は白い米の飯ぁ食わしちゃあもらえんかったんデェ。甘藷ん中に米をチイト(少し)入れたイモジャ(甘藷飯)か、丸麦の麦飯かしか食われんかった。米の飯はノ、オロセ(仕事を休む日。ハレの日)か法事の時ぐらいしか炊かんかった。まあ、米の飯が一番うまぁ御馳走じゃったんよ。 トンヤンいう若い衆がのう、法事に招ばれたんじゃげな。お経が済んで白い米の飯が出された。ほうしたらトンヤンはなんじゃげな、ソリョウ(それを)ドウナコウナ(何とも言いようがないほど)食やあげたんじゃと。ホシテ(そして)去ぬる(帰る)段になったら、アガリガマチ(玄関の上がり口)に腰を下ろして、 「誰かオマに(私に)下駄ぁ履かせてくれんさいや」 言うたげな。見りゃあ、ツキノッテ(反り返って)天井を見ておったと。ほいで、まわりにおった者が、 「ワリャア(お前は)ソガイニ(そんなに)ツキノットるけえ、履かれんのよ。屈みゃあメエメエで(自分で)履かれるじゃあなぁか」 言うたら、トンヤンが言うたげな。
「屈めるぐらいなら、もう一杯食うわいや」
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