村の鎮守の秋祭りでのう、氏神様の境内で、太鼓をダンガラダンガラ叩きよったら、物見岩から屋形石まで、ちょうど運動会で万国旗を吊るしたように、千生り提灯が下がったことがあったげな。みんなは、 「ぐんひんさんの仕業じゃッ!」 と魂げて、目をひっくりむいだげな。 ある日のことよのう。物見岩の方に、火の塊があったそうじゃ。ぐんひんさんの火は、一つの塊になっていて、その塊の中心から四方へ向けて、パッと勢いよく飛び散って行ったそうな。
ぐんひんさんは、戸の節穴から見られたり、人差指でさされるのが、ひどう嫌いじゃげなのう。昔は板戸じゃったけん、どうしても二つや三つ、節穴はあったよのう。家の中には庭土間があった。そこへ肥えタゴを置いて、小便していた。タゴいうたら木の桶よ。便所は外にしか無かったし、外へ出ると淋しいし、冬には寒いので、肥えタゴを土間へ置いて用を足し、あくる日、外の肥壷へうつしていたのよ。ある日、太郎兵衛さんが肥えタゴへ小便をしに行ったら、外が何か異様な雰囲気でのう、板戸の節穴から外を見たら、太郎兵衛さんの目をめがけて、パラパラッと砂をまかれてのう、「ヒャッ!」と気絶したんじゃげな。
また、吾作と吉松はのう、体術を修業していて、とてもとても強かった。なんでも、足の指先だけ縁側に掛けて、気合いを入れると、大の男三人が引っ張っても動かなかったそうな。そんなに強い二人が連れ立って歩いていて、ぐんひんさんとすれ違いざま、目にも止まらぬ早業で取って投げられた。そして、したたかに体を地面で打って、しばらくヨウ起きなかった(起きることが出来なかった)そうじゃ。 なんでも、ぐんひんさんに会ったら、履いている草履を頭の上に載せて、額を地面にしっかりこすりつけて、 「こらえてください。許してください。ぐんひん様」
と言わなければならなかったそうな。どうでもぐんひんさんが、真っ赤に熱した鉄を飲む時に、ひどうにやられたそうな。十二時(真昼)が多かったんじゃげな。
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