これは、昭和二十二年(一九四七)ごろ、元兵学校でいっしょに働いていた井上君のお母さんから聞いた話です。 いつごろのことかわかりませんが、月の無い薄暗い夕方だったそうです。江田島湾の見える縁側に子どもたちと並んで夕涼みをしていると、向こうの中村(現在の中町)の山の上に、ポッカリと浮くように丸い火の玉が現れて、右に左にと揺れていたそうです。子どもたちが、 「お母さん、火の玉が……」 と言ったら、火の玉はスーッと動いて飛渡瀬の方へ回り、「アッ、あそこに…」と言っているうちに、ものすごい速さで家の前を飛び過ぎて、津久茂の方へ見えなくなったという話です。 その後も一、二度見たということですが、何も言わずに静かにしていれば、江田島の八幡神社の辺りで消えるので、「ありゃあ天狗さんの火で、中村の八幡さんから来なさるんじゃろう」という話でした。
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