世間話7 妖怪の奇異

天狗てんぐさんの火(江田島町)
 これは、昭和 二十二年(一九四七)ごろ、元兵学校でいっしょに働いていた井上君のお母さんから いた話です。
 いつごろのことかわかりませんが、 の無い薄暗い夕方だったそうです。江田島湾の見える縁側 に子どもたちと並んで夕涼みをしていると、向こうの中村(現在の中町)の山の上に、ポッカリと くように丸い火の玉が現れて、右に左にと揺れていたそうです。 どもたちが、
「お さん、火の玉が……」
 と言ったら、火の玉はスーッと動いて飛渡瀬ひとのせの方へ回り、「アッ、あそこに…」と言っているうちに、ものすごい速さで家の前を飛び過ぎて、津久茂つくもの方へ見えなくなったという です。
 その も一、二度見たということですが、何も言わずに静かにしていれば、江田島の八幡神社 の辺りで消えるので、「ありゃあ天狗さんの火で、中村の八幡さんから なさるんじゃろう」という話でした。

(伝承者 笠岡雅芳)