大附に胡子実一さんという方がおられました。もう亡くなりましたが、その人から聞いた話です。 胡子さんが若かったころ、深江の友人を家に招いて、二人でお酒を飲んだ時のことだそうです。お酒があまり無かった時代で、二人は時を忘れて飲んでいるうちに、すっかり酔ってしまいました。 「もう、そろそろ帰ろう」 と言うので、お土産を風呂敷に包んで持たせて、胡子さんは友人を見送りました。
そのころ、深江村と大附を結ぶ村道(通称・深江道路)がありました。今は新しい町道が出来て、古い道は農道として使われています。友人はその「深江道路」を越すわけですが、お土産をしっかり持って歩いて帰りました。途中に、昔から「広島ゴミ」を一時積み上げて置く所がありました。そこまで帰って来たら、そこから先は、歩いても歩いても深江の家に着きません。同じ所をいつまでも行ったり来たりしているような……道がわからなくなってしまったんだそうです。東の空が薄明るくなったころに、ようやく友人は気が付きました。すると、お土産の風呂敷包みがズッシリと重たくなっていました。振ってみると、ガチャガチャと音がします。
――どうしたんだろうか。 と、風呂敷を解いて見ると、お土産の御馳走は無くなっていて、茶碗のコゲタ(壊れた)ような物がいっぱい入っていたんだそうです。
――こりゃあ狐にだまされたんじゃ。 友人は、それにしてもどうやってだまされたのか、全く思い出すことができなくて、不思議でならなかったそうです。
あの深江道路のゴミ置き場付近には狐の親分が棲んでいて、「みんなよくだまされるから、気をつけろ」と、昔から評判になっていた所なんだそうです。
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